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歴史からみる信託制度

「最近、信託という言葉を聞きますが信託とは何ですか?」、「信託に興味がありますがよくわからない」という質問を頂いたり、疑問を持たれる方もおられると思います。

今回は歴史的観点から信託という制度を説明していきます。信託の制度の歴史について知りたい方は本ブログを見て参考にしていただけると幸いです。

目次

1 信託制度のはじまり

 1-1 信託制度の始まりはイギリスの慣習制度

 1-2 ヨーロッパからアメリカへ

2 日本での信託制度の歴史

 2-1 日本での信託制度のはじまり

 2-2 日本の信託制度の確立

 2-3 第三者の関与がない

 2-4 戦時中の信託制度

3 日本の現代の信託制度

3-1 家族信託とは

4 まとめ

1 信託制度のはじまり

  信託制度のはじまりは、古代エジプトや古代ローマが起源であるなど様々な説がありますが、一般的には中世のイギリスにおいて成立した慣習制度がそのはじまりと言われています。

 1-1 信託制度の始まりはイギリスの慣習制度

  イギリスでは、十字軍によるイスラム王朝への遠征等の戦争に際し、領地の管理を遠征中の領主が信頼できる第三者に任せ、その領地で得られた収益を残された家族に給付してもらい、戦地から戻った折に第三者から領地の返還を受けるという慣習制度がありました。

  この慣習制度は、フランシスコ教会の僧侶がイギリスにおもむいた際にも利用されていたという記録があり、ヨーロッパにおいてはこうした制度が普及されていたと考えられます。

  この慣習制度が、現在における信託制度のはじまりと言われています。

ヘルメットをかぶった黒い革のジャケットの男

 1-2 ヨーロッパからアメリカへ

その後、信託制度は、ヨーロッパからアメリカに渡り、個人の遺言執行や遺産管理に際し、信託制度が用いられるようになりました。更に、19世紀に起こった南北戦争を契機に盛んとなったインフラ事業の社債引受けのために、次第に信託会社が広がっていきました。

灰色のコンクリートの建物

2 日本での信託制度の歴史

 日本の信託制度は、明治後半にアメリカで発展した制度が導入されてできたものといわれています。1900年(明治33年)に「信託」という言葉が初めて法律に登場しました。「地方債券、社債券及株券ニ関スル信託ノ業務」と記された日本興業銀行法が最初になります。

2-1 日本での信託制度のはじまり

担保附社債信託法が1905年(明治38年)に制定され、営業免許を受けた有力銀行が、担保付社債信託業務を行うようになりました。日本では、事業会社を対象とする信託制度が最初に導入されました。担保付社債信託とは担保権を信託財産として、受益者を社債権者とする信託です。一方で、1906年(明治39年)に設立された東京信託株式会社が個人の財産の管理・運用を専門に取り扱う信託会社だといわれています。

2-2 日本の信託制度の確立

 日本では、信託会社が数多く設立され、1921年(大正10年)末には488社を数えるまで信託会社が設立されました。しかし、当時は信託に関する概念も、法整備もされていなかったために、資力や信用力が十分でない信託会社も少なくありませんでした。そのため、1922年(大正11年)に「信託法」と「信託業法」が信託の概念を明確化し、信託制度の健全な発展を図るために制定されました。これらの法律により日本の信託制度は確立され、発展期を迎えました。なお、三井住友信託銀行、みずほ信託銀行、三菱UFJ信託銀行の前身である三井信託銀行、住友信託銀行、安田信託銀行、三菱信託銀行が設立されたのもこの時期です。

2-3 戦時中の信託制度

 第二次世界大戦下においては、金融機関や信託会社の統合が進められました。「普通銀行等ノ貯蓄銀行業務又ハ信託業務ノ兼営等ニ関スル法律(現在の兼営法)」が1943年(昭和18年)に制定されました。その後、信託会社の統合が進み、専業の信託会社は戦争が終わるころには7社程になりました。

2-4 戦後の信託制度

 戦後、政府およびGHQ(連合軍総司令部)の方針により、信託会社が1948年(昭和23年)に「銀行法」により銀行に転換しました。兼営法により、信託業務を兼営する信託銀行となったのです。戦後の経済復興のために長期の資金の安定供給が必要になり、1952年(昭和27年)に「貸付信託法」が1952年(昭和27年)に制定されました。貸付信託の取扱いが信託銀行により始められました。貸付信託は、多数の者から資金を集め、信託受益証券を発行して資金を貸付け等により運用する制度です。貸付信託は、戦後、産業界への長期資金の供給源として大きな役割を果たす一方で、広く国民から比較的高利の安定した長期の貯蓄手段として、受け入れられるようになり、現在に至っています。

3 日本の現代の信託制度

日本の信託制度は、信託銀行による「商事信託」(貸付信託、年金信託など)を中心に発展してきました。しかし、その一方で近年高齢社会により後見的な財産管理や遺産承継を目的とする「家族信託」への期待が高まってきました。

上記のような経緯から2006年に信託法の改正が行われ、2007年から施行されました。法改正により家族信託が広まりつつあります。

3-1 家族信託とは

 家族信託は、自分の老後等に備えて所有している不動産や預貯金などを信頼できる家族に託し、管理等を任せる方法です。本人が認知症などにり患して判断能力が低下すると財産管理ができない場合に不動産や預貯金などを信頼できる家族に託し、管理等を任せることができるため認知症対策の一つとして注目されています。

詳しくは知っておきたい!家族信託の5つのメリット(https://osaka-kazoku-shintaku.jp/archives/1740)

「家族信託」のやり方と手続きについてわかりやすく解説します。(https://osaka-kazoku-shintaku.jp/archives/1667)

の弊所ブログにて開設しておりますので参考にしていただけると幸いです。

4まとめ

以上が信託制度の歴史についてのお話でした。ここまでのお話をまとめたものが以下の表です。

信託制度のはじまり・イギリスの戦争等の遠征に際し、領地の管理を遠征中の領主が信頼できる第三者に任せ、その領地で得られた収益を残された家族に給付してもらい、戦地から戻った折に第三者から領地の返還を受けるという慣習制度がはじまり
日本での信託制度の歴史・日本の信託制度は、明治後半にアメリカで発展した制度が導入されてできたものといわれています。・1922年(大正11年)に「信託法」と「信託業法」により日本の信託制度は確立され、発展期を迎えた。・戦後、政府およびGHQ(連合軍総司令部)の方針により、信託会社が1948年(昭和23年)に「銀行法」により銀行に転換、兼営法により、信託業務を兼営する信託銀行となった。
日本の現代の信託制度・近年高齢社会により後見的な財産管理や遺産承継を目的とする家族信託への期待が高まってきた。・認知症対策の一つとして家族信託が注目されている。

司法書士法人やなぎ総合法務事務所では、大阪(阿倍野区・阿倍野、天王寺)、東京(渋谷区・恵比寿、広尾)事務所にて「無料相談・出張相談」も受け付けております。どんな些細なご相談も親身になり耳を傾け、どのようなご依頼でもお客様のご希望、目的に近づけるよう励みます。お気軽にご相談、お問い合わせください。

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この記事の監修者

代表社員  柳本 良太(やなぎもと りょうた)

柳本 良太

「法律のトラブルで困っている人を助けることができる人間になりたい」という思いから18歳の時に一念発起し、2004年に宅地取引主任者試験に合格。続いて、2009年に貸金業務取扱主任者試験、司法書士試験に合格し、翌2010年に行政書士試験に合格。2010年に独立開業し、「やなぎ司法書士行政書士事務所(現:司法書士法人やなぎ総合法務事務所)」を設立し、代表社員・司法書士として「困っている人を助ける」ことに邁進する一方で、大手資格予備校講師として多くの合格者も輩出。

その後、行政書士法人やなぎKAJIグループ(現:行政書士法人やなぎグループ)を設立、桜ことのは日本語学院の開校などより広くの人のための展開を行いながら活躍中。

モットーは「顧客満足ファースト」と「すべてはお客様の喜びのために」。

<保有資格>

・宅地取引主任者(2004年取得)

・貸金業務取扱主任者(20009年取得)

・司法書士(2009年取得)

・行政書士(2010年取得)

<所属法人>

司法書士法人やなぎ総合法務事務所 代表社員

行政書士法人やなぎグループ 代表社員

やなぎコンサルティングオフィス株式会社 代表取締役

桜ことのは日本語学院 代表理事

・LEC東京リーガルマインド資格学校 元専任講師

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