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「不動産の管理に困難を感じたら…」家族信託で親族に任せるには?

今回は司法書士法人やなぎ総合法務事務所でご依頼いただいた家族信託に関する事件についてお話しさせていただきます。「管理困難な不動産を親族に任せたい」という事例です。
家族信託を用いた不動産管理について知りたい方は本ブログを見て参考にしていただけると幸いです。

目次
1 事件概要
2 やなぎ総合法務事務所の対応
2-1 相続登記手続き
2-2 信託契約書作成及び信託登記申請
2-3 信託専用口座作成
3 体験者の感想
4 まとめ

1 事件概要
はじめに今回の事例について紹介させていただきます。

・事件概要
体験者(委託者):Xさん(大阪市/80代/女性)
受託者:Yさん(大阪市/50代/女性)
その他関係者:Aさん(大阪市/50代/男性)
相談の内容:多額の固定資産税がかかる土地を所有しているが
管理が難しいと思っている。
息子は病気がちで不動産を任せることが難しいと考えている。

・受任までの経緯
面談時の簡単な内容は以下の通りです。
面談者:「本日はどの様なご相談でしょうか?」
相談者X:「亡くなった父が不動産を所有していたのですが、名義変更が終わっていないのでご相談させていただきたいです。」
面談者:「承知しました。亡くなったお父様には配偶者、Xさん以外のお子様はおられましたか?」
相談者X:「母と兄がいましたが父より先に亡くなっています。」
面談者:「お亡くなりになられたお兄様にお子様はおられましたか?」
相談者X:「兄には娘のYがいます。」
面談者:「承知いたしました。不動産はどなたが取得されるご予定ですか?」
相談者X:「私が取得予定です。」
面談者:「承知いたしました。それでは、手続きの進め方ですが・・・・・」
相談者X:「その前に、もう一つご相談があります。」
面談者:「どの様なご相談でしょうか?」
相談者X:「私が所有している不動産の固定資産税が多額であり、管理をすることが難しいと感じるようになりました。何かいい方法はないでしょうか?」
面談者:「家族信託という方法があります。家族信託でお子様に不動産の管理をお任せするというのはいかがでしょうか?」
相談者X:「私には息子Aがいるのですが、病気がちで入退院を繰り返しているので管理を任せることは難しいと思います。ちなみに、姪のYではだめなのでしょうか?」
面談者:「可能です。その場合の手続きの進め方ですが・・・・・」

2 やなぎ総合法務事務所の対応
以下ではXさんの事例をどのように解決したかについて説明していきます。

2-1 相続登記手続

まずは亡くなった父名義の不動産をXさん名義へ相続登記をします。

・相続人の確認
遺産分割をする前に「相続人は誰か?」ということを確認する必要があります。遺産分割は相続人全員でする必要があるためです。
Xさん以外に相続人がいないか、戸籍を集めて確認をします。
なお、相続人でない人が遺産分割協議をした場合または相続人が遺産分割協議に参加していない場合は遺産分割が無効になりますので注意が必要です。

・相続不動産の調査
次に、不動産の調査を行います。遺産分割協議をする財産に漏れがないよう調査をします。
不動産の調査は、名寄帳の取得をする方法で行います。名寄帳とは、市区町村が作成している固定資産税課税台帳を所有者ごとにまとめたものです。今回の場合だと、亡くなったお父様の名寄帳を市区町村に請求することで、その方がその市区町村に持っている不動産がすべて記載されます(一部市区町村を除く)。
名寄帳取得に必要な書類は、①身分証明書(運転免許証等)②亡くなった方の死亡の記載のある戸籍と相続人(窓口に行かれる方)の現在戸籍③名寄せの申請書④手数料(各自治体によって異なります)です。
その他、取得当時の権利証の確認を行ったり、公図をあげるなどで前面道路が私道かどうかなどを調査したりもします。

・遺産分割協議書の作成
相続人が確定して、相続財産の調査が完了したら、相続財産をどう分けるか話し合う遺産分割協議をします。話し合いがまとまったら、遺産分割協議の内容を書面にして、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は、後に発生するトラブルを防止するためにも、正確に作成する必要があります。

その他気を付けるべきポイントは「不動産をどのように分けるか?」です。方法としては①相続人の1人がすべて取得する②相続人の1人が名義人になり売却し、売却代金を分配する③相続人全員又は一部で共有にするなどが考えられます。
しかし、③はお勧めできません。共有になると不動産を使用・収益・処分する際、他の共有者との折衝が必要となり、意見が合わない場合にはトラブルに発展する可能性があるためです。できるならば上記①②の方法ですることが望ましいでしょう。

・不動産の名義変更のやり方
遺産分割協議書の作成が完了した後不動産の名義変更の手続きをします。

不動産の名義変更の申請先は、名義変更をする不動産を管轄する法務局です。法務局の管轄については法務局のホームページをご覧ください。(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html)

遺産分割協議による不動産の名義変更に必要な書類は下記のようになります。

戸籍(亡くなった方の出生から死亡まで)
除票又は戸籍除附票(亡くなった方)
戸籍(相続人全員)
住民票又は戸籍附票(相続登記で名義人となる方)
遺産分割協議書
印鑑証明書(相続人全員)
不動産の評価証明書

2-2 信託契約書作成及び信託登記申請

Xさん名義の不動産について受託者Yさんとする信託登記をして、不動産の管理をYさんに任
せられるようにします。
今回は、委託者Xさん(不動産を持っている人)、受託者Yさん(不動産を管理する人)、受
益者Xさん(利益を受け取る人)とします。

話し合いで決めた内容に基づいて、信託契約書を作成します。契約書の内容については、可能なかぎり具体的な表現を用いてあいまいな表現は避け、解釈の余地を残さないようにします。後からトラブルに発展して、財産管理の邪魔になる可能性があるからです。

必要に応じて、税理士に、税務上問題がないかなどについて確認を行い、漏れのない信託契約書を作成します。

信託契約書は必ず公正証書で作成する必要はありませんが、多くの信託銀行等では信託専用の
口座を作成する際に公正証書で信託契約書を作成することを求められます。そのため信託契約
書は公正証書で作成することが必要となります。

・公証役場での手続き
公証役場で信託契約書を公正証書にする際には以下の書類等が必要となります。公証役場
へ行くまでに用意をします。

本人確認資料(運転免許証やマイナンバーカードなどの、公的機関から発行された書類)
受託者と受益者の印鑑証明書(発行から3カ月以内のもの)
受託者と受益者の実印
信託する財産に関する資料(不動産を家族信託の対象にする場合、不動産の「登記事項証明書
(登記事項証明書)」、さらに、不動産の価格を証明するための、「固定資産税評価証明書」
や「固定資産税課税明細書」が必要となります。)
戸籍(親子などの家族関係が確認できる戸籍謄抄本)

公証役場へ出向く前に、公証人との打ち合わせが必要となります。具体的には信託契約書の案
及び各種資料を作成し、事前に公証役場に提示することになります。
信託契約書案について打ち合わせの上、最終原案が決定すると、調印日時を決めて公証役場に
て本人の意思確認と信託契約書に押印をします。その際、上記の書類の提出と、公正証書の作
成費用、信託契約書用の収入印紙が必要となります。

・登記申請
Xさんは信託財産に不動産があるため登記の申請が必要です。具体的には、不動産の名義を委託者であるXさんから受託者であるYさんに変更する登記を申請します。登記を申請すると、名義が変わるのと同時に「信託目録」が作成され、登記事項証明書に信託の内容が記録されます。

登記手続には以下の書類が必要となります。場合によっては追加で必要となる書類もあります。

委託者の印鑑証明書
(発行から3カ月以内)
委託者の実印
登記済権利証または登記識別情報
(委託者が不動産を取得した際に発行されたもの)
受託者の住民票
受託者の認印

2-3 信託専用口座作成

不動産収益を管理するために信託銀行等で信託口口座を作成する場合、信託契約の内容や信
託金銭の金額などについて審査のあるものが多くなります。審査がある場合は無事に審査を経
なければ信託口口座を作成することができません。そのため、信託口口座の開設を希望する場合は、公証役場との打ち合わせに先立ち信託口口座の作成手続きを行います。なお、ご自身で信託口口座を作成する場合、銀行側では専門家を介さない個人からの信託口口座開設のための審査を一律に断っているところも多いため、信託口口座の開設・利用を前提とする場合は専門家にご相談される方が良いでしょう。

3 体験者の感想

以下は事件が完了したときのAさんと事務所の担当者との会話です。

担当者:「お預かりしていた書類と取得させていただいた公文書を返却させていただきます。問題がなければ受領書にサインをお願いします。」

Xさん:「ありがとうございます。不動産の管理が難しいと感じていたので姪が管理してくれるようになって楽になりました。」

担当者:「もしご事情が変わられた場合は、お申し出いただければ変更などの手続きをさせていただきますのでお気軽にお声がけください。」
Xさん:「ありがとうございます。また何かありましたらお願いします。」

4 まとめ
以上が「「不動産の管理に困難を感じたら…」家族信託で親族に任せるには?」についてのお話でした。今回のお話を以下にまとめています。

・不動産管理に不安がある場合には家族信託登記をして、親族に管理を任せるという方法があります。

・信託契約書は必ず公正証書で作成する必要はありませんが、多くの信託銀行等では信託専用の口座を作成する際に公正証書で信託契約書を作成することを求められます。

・家族信託を検討される場合は、まず信託口口座作成について銀行に相談しましょう。信託銀行等で信託口口座を作成する場合、信託契約の内容や信託金銭の金額などについて審査のあるものが多くなります。公証役場との打ち合わせに先立ち信託銀行の審査を通過しておく方が良いでしょう。

・信託に必要となる書類は、本人確認資料、受託者と受益者の印鑑証明書、受託者と受益者の実印、信託する財産に関する資料(不動産を家族信託の対象にする場合、不動産の「登記事項証明書(登記事項証明書)」、さらに、不動産の価格を証明するための、「固定資産税評価証明書」や「固定資産税課税明細書」が必要となります。)、戸籍(親子などの家族関係が確認できる戸籍謄抄本)

・信託に必要となる書類は、委託者の印鑑証明書(発行から3カ月以内)、委託者の実印、登記済権利証または登記識別情報、(委託者が不動産を取得した際に発行されたもの)、受託者の住民票、受託者の認印

・信託契約書については、司法書士や弁護士、税理士などの専門家に、登記は可能か、税務上問題がないか、などについて確認しておきましょう。

この記事の監修者

代表社員  柳本 良太(やなぎもと りょうた)

柳本 良太

「法律のトラブルで困っている人を助けることができる人間になりたい」という思いから18歳の時に一念発起し、2004年に宅地取引主任者試験に合格。続いて、2009年に貸金業務取扱主任者試験、司法書士試験に合格し、翌2010年に行政書士試験に合格。2010年に独立開業し、「やなぎ司法書士行政書士事務所(現:司法書士法人やなぎ総合法務事務所)」を設立し、代表社員・司法書士として「困っている人を助ける」ことに邁進する一方で、大手資格予備校講師として多くの合格者も輩出。

その後、行政書士法人やなぎKAJIグループ(現:行政書士法人やなぎグループ)を設立、桜ことのは日本語学院の開校などより広くの人のための展開を行いながら活躍中。

モットーは「顧客満足ファースト」と「すべてはお客様の喜びのために」。

<保有資格>

・宅地取引主任者(2004年取得)

・貸金業務取扱主任者(20009年取得)

・司法書士(2009年取得)

・行政書士(2010年取得)

<所属法人>

司法書士法人やなぎ総合法務事務所 代表社員

行政書士法人やなぎグループ 代表社員

やなぎコンサルティングオフィス株式会社 代表取締役

桜ことのは日本語学院 代表理事

LEC東京リーガルマインド資格学校 元専任講師

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