「最近、お金の管理をすることが難しくなってきた」、「老後に財産管理ができるか不安」というお悩みを持たれる方もおられると思います。今回は老後の対策としてよく挙げられる「後見制度」を説明していきます。老後の財産管理について知りたい方は本ブログを見て参考にしていただけると幸いです。
目次
1 「後見制度」とは?
1-1 「法定後見制度」とは?
1-2 「任意後見制度」とは?
2 「認知症」になってしまったら困ること
2-1 「認知症」になった親の口座が使えなくなる!?
2-2 契約や遺産分割協議が無効!?
2-3 詐欺や悪質商法の被害
3 「法定後見」と「任意後見」の手続き
3-1 「法定後見」の手続き
3-2 「任意後見」の手続き
4 まとめ
1 「後見制度」とは?
認知症等で判断能力が不十分になってしまった方は、自分で財産を管理したり、契約を結んだり、ご自身で手続きをすることが困難になることがあります。また、不必要な契約を締結したり、悪質商法の被害に遭った場合に自身で対応することも困難になることがあります。上記のような判断能力が不十分になってしまった方を保護し、支援する制度が成年後見制度です。
成年後見制度は、法定後見制度と任意後見制度の2つの制度があります。
1-1 「法定後見制度」とは?
法定後見制度には「後見」、「保佐」、「補助」の3つの制度があります。3つの制度のうちいずれを利用できるかは本人の判断能力の程度に応じて決まります。
「後見」
精神上の障害等により、判断能力が欠けているのが通常の状態にある方を保護・支援するための制度です。この制度では家庭裁判所が選任した成年後見人が、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人がした不利益な法律行為を本人または成年後見人が取り消すことができます。なお、日用品(食料品や衣料品等)の購入等は、取消しの対象にならないため注意が必要となります。
「保佐」
精神上の障害等により、判断能力が著しく不十分な方を保護・支援するための制度が保佐制度です。この制度では法律で定められた一定の行為について、家庭裁判所が選任した保佐人の同意を得ることが必要になります。保佐人の同意を得ないでした行為は、本人または保佐人が取り消すことができます。後見と同様に、日用品(食料品や衣料品等)の購入等は、取消しの対象にならないため注意が必要です。
「補助」
軽度の精神上の障害等により、判断能力の不十分な方を保護・支援するための制度です。この制度では、家庭裁判所の審判によって、特定の法律行為について、家庭裁判所が選任した補助人に同意権・取消権や代理権が与えられます。この特定の法律行為は、保佐にて定められている一定の行為より狭い範囲でなければなりません。また、後見と同様に、日用品(食料品や衣料品等)の購入等は、取消しの対象にならないため注意が必要です。
法定後見制度のメリット・デメリットとして以下のものがあげられます。
メリット ・契約を取り消せる
・介護サービスや施設入所などの契約ができる
デメリット ・後見人は家庭裁判所が選任するため、希望通りの後見人になる
とは限らない
・積極的な資産運用ができない可能性がある
1-2 「任意後見制度」とは?
任意後見制度とは本人が判断能力を有するうちに、任意後見人となる人・任意後見人に委任する事務の内容を公正証書による契約で定めて、本人の判断能力が不十分になった後に、委任された事務を任意後見人が代わりに行う制度です。
メリットとしては、本人が任意後見人を選ぶことができる、委任する事務を契約書で定めることができるなどの点があります。ただしデメリットとして、任意後見監督人の選任が必須となり報酬が追加で発生する、任意後見人には取消権が認められない、法定後見は判断能力が失われた後に申立を行うのに対し、任意後見契約は本人の判断能力があるうちに契約を締結しなければならない、などがあります。
2 「認知症」になってしまったら困ること
後見制度が必要となる場面として代表的な「認知症」について、親が「認知症」になってしまったら困ることを以下で紹介していきます。
2-1 「認知症」になった親の口座が使えなくなる!?
多くの金融機関では口座の名義人が「認知症」になった場合、口座が凍結されます。つまり口座からお金を引き出せなくなってしまいます。上記のような状態になると「認知症」になった親の医療費や施設費などの支払いを立て替えることになってしまいます。医療費や施設費などは高額になるため、困ったことになります。
2-2 契約や遺産分割協議が無効!?
「認知症」等、意思能力がない方が法律行為をしても無効となります。例えば以下のような場合に困ったことになります。
事例
Aには配偶者のBと子のCがいます。Bは認知症になってしまいました。その後Aは亡くなりました。
この場合、Bは認知症であるため遺産分割協議ができません。遺産分割協議ができない場合、Aの、銀行の口座解約や不動産の名義変更などで手続きができないということになります。
2-3 詐欺や悪質商法の被害
「認知症」になると判断能力が低下するため詐欺や悪質商法の被害に遭うリスクが高くなります。さらに、「認知症」になると被害に遭ったとしてもその後の適切な対処ができないことになります。
3 「法定後見」と「任意後見」の手続き
法定後見・任意後見の手続き方法を解説します。
3-1 「法定後見」の手続き
今回は法定後見制度のうち成年後見の申立方法について説明していきます。以下は裁判所のホームページ(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_01/index.html)を要約したものですので詳しくは裁判所のホームページをご覧ください。
3-1-1 誰が申し立てることができるの?
以下の人が申し立てることができます。
本人(後見開始の審判を受ける方)
配偶者
四親等内の親族
未成年後見人
未成年後見監督人
保佐人
保佐監督人
補助人
補助監督人
検察官(任意後見契約が登記されているときは,任意後見受任者,任意後見人及び任意後見監督人も申し立てることができます。)
3-1-2 申立先はどこ?
本人の住所地の家庭裁判所です。詳しくは裁判所のホームページ(https://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/kankatu/index.html)をご覧ください。
3-1-3 申立てに必要な費用
申立費用は以下のとおりです。
・申立手数料 収入印紙800円分
・連絡用の郵便切手(裁判所により異なります。)
・登記手数料 収入印紙2600円分
※精神状態により別途、鑑定費用がかかる場合があります。
3-1-4 申立てに必要な書類
申立てに必要な書類は以下のとおりです。詳しくは裁判所のホームページ(https://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/kankatu/index.html)をご覧ください
「申立書」
以下は標準的な申立添付書類であり、事例によっては異なる場合があります。
・本人の戸籍謄本(全部事項証明書)(発行から3か月以内のもの)
・本人の住民票又は戸籍附票(発行から3か月以内のもの)
・成年後見人候補者の住民票又は戸籍附票(発行から3か月以内のもの)※成年後見人等候補者が法人の場合には,当該法人の商業登記簿謄本(登記事項証明書)
・本人の診断書(発行から3か月以内のもの)
・本人情報シート写し
・本人の健康状態に関する資料(介護保険認定書,療育手帳,精神障害者保健福祉手帳,身体障害者手帳などの写し、本人の成年被後見人等の登記がされていないことの証明書(発行から3か月以内のもの))
・本人の財産に関する資料(預貯金通帳写し、残高証明書など、不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書)など、ローン契約書写しなど)
・本人の収支に関する資料
3-2 「任意後見」の手続き
3-2-1 任意後見契約書の作成
任意後見の制度を利用するには任意後見契約書を作成する必要があります。任意後見契約を締結するには、公証役場で公正証書を作成しなければなりません。公正証書を作成してもらう公証役場に制限はないので行きやすい公証役場で作成するとよいでしょう。任意後見契約書を作成するためには、任意後見契約書の案を作成し、事前に公証人との打ち合わせが必要となります。任意後見契約書の案が採用されると、公証役場へ行き、本人の意思確認と任意後見契約書への押印をします。
その際の必要書類は以下のとおりです。
本人
・印鑑登録証明書+実印(または運転免許証・マイナンバーカード等の顔写真付き公的身分証明書+認印または実印)
・戸籍謄本または抄本
・住民票
任意後見人となる人
・印鑑登録証明書+実印(または運転免許証・マイナンバーカード等の顔写真付き公的身分証明書+認印または実印)
・住民票
費用は以下のようになります。
・公正証書作成手数料 1契約につき1万1000円(証書の枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚を超えるときは、超える1枚ごとに250円が加算されます。)
なお、本人が病床にあって公証人が出張する場合には、病床執務加算(5500円)があり、1契約につき1万6500円となります。また、日当と交通費も必要となります。
・法務局に納める収入印紙代2,600円
・登記嘱託手数料1,400円
・書留郵便料(登記申請のため法務局に任意後見契約公正証書謄本を郵送するための書留料金ですが、その重量によって若干異なります。)
・正本謄本の作成手数料 証書の枚数×250円
3-2-2 任意後見監督人選任の申立て
任意後見契約書を作成しただけでは効力は発生しません。ご本人の判断能力が衰えたときに、任意後見受任者等が家庭裁判所に任意後見監督人の選任の申立てをする必要があります。また申立ては本人の住民票上の住所地又は実際に生活してる居住地を管轄する家庭裁判所にする必要があります。
必要書類の一覧は以下のとおりです。(裁判所が公開している表です。)
参照:裁判所のホームページ(https://www.courts.go.jp/chiba/saiban/tetuzuki/l4/Vcms4_00000458.html)
4まとめ
以上が「後見制度」についてのお話でした。ここまでのお話をまとめたものが以下の表です。
「後見制度」とは?
・認知症等で判断能力が不十分になってしまった方を保護し、支援する制度。
・法定後見制度と任意後見制度の2つの制度がある。
・法定後見制度には「後見」、「保佐」、「補助」の3つの制度があり、3つの制度のうちいずれを利用できるかは本人の判断能力の程度に応じて決まる。
・法定後見のメリットは、契約を取り消せる、介護サービスや施設入所などの契約ができる、デメリットは、後見人は家庭裁判所が選任するため、希望通りの後見人になるとは限らない、積極的な資産運用ができない可能性がある。
・任意後見制度とは本人が判断能力を有するうちに、任意後見人となる人・任意後見人に委任する事務の内容を公正証書による契約で定めて、本人の判断能力が不十分になった後に、委任された事務を任意後見人が代わりに行う制度。
・任意後見のメリットは、本人が任意後見人を選ぶことができる、委任する事務を契約書で定めることができる、デメリットは、任意後見監督人の選任が必須となり報酬が追加で発生する、任意後見契約は本人の判断能力があるうちに締結しなければならない。
「認知症」になってしまったら困ること
・「認知症」になった親の口座が凍結されて使えなくなる。
・意思能力がないので、契約や遺産分割協議が無効となる。
・詐欺や悪質商法の被害に遭ったとしてもその後の適切な対処ができない。
「法定後見」と「任意後見」の手続き
・法定後見を申立てできるのは、本人(後見開始の審判を受ける方)、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、検察官。
・申立先は、本人の住所地の家庭裁判所。
・申立てに必要な費用は、申立手数料 収入印紙800円分、連絡用の郵便切手(裁判所により異なります。)、登記手数料 収入印紙2600円分。
・任意後見の必要費用は、公正証書作成手数料 1契約につき1万1000円(その他事情により追加あり)、法務局に納める収入印紙代2,600円、登記嘱託手数料1,400円、書留郵便料、正本謄本の作成手数料 証書の枚数×250円
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この記事の監修者
代表社員 柳本 良太(やなぎもと りょうた)
「法律のトラブルで困っている人を助けることができる人間になりたい」という思いから18歳の時に一念発起し、2004年に宅地取引主任者試験に合格。続いて、2009年に貸金業務取扱主任者試験、司法書士試験に合格し、翌2010年に行政書士試験に合格。2010年に独立開業し、「やなぎ司法書士行政書士事務所(現:司法書士法人やなぎ総合法務事務所)」を設立し、代表社員・司法書士として「困っている人を助ける」ことに邁進する一方で、大手資格予備校講師として多くの合格者も輩出。
その後、行政書士法人やなぎKAJIグループ(現:行政書士法人やなぎグループ)を設立、桜ことのは日本語学院の開校などより広くの人のための展開を行いながら活躍中。
モットーは「顧客満足ファースト」と「すべてはお客様の喜びのために」。
<保有資格>
・宅地取引主任者(2004年取得)
・貸金業務取扱主任者(20009年取得)
・司法書士(2009年取得)
・行政書士(2010年取得)
<所属法人>
・司法書士法人やなぎ総合法務事務所 代表社員
・行政書士法人やなぎグループ 代表社員
・やなぎコンサルティングオフィス株式会社 代表取締役
・桜ことのは日本語学院 代表理事
・LEC東京リーガルマインド資格学校 元専任講師
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