友だち追加

初心者でも分かる!「家族信託」とは?

「最近、お金の管理をすることが難しくなってきた」、「老後に財産管理ができるか不安」というお悩みを持たれる方もおられると思います。今回は老後の対策としてよく挙げられる「家族信託」を説明していきます。「家族信託についてイチから知りたい」方は本ブログを見て参考にしていただけると幸いです。

目次

1 老後の不安を解消する「家族信託」とは?

 1-1 「信託」とは。 「投資信託」との違いは?

 1-2意外と知らない「信託制度」の始まりと歴史

2  認知症に備える!家族信託をするメリット

 2-1 認知症対策

2-2 柔軟に財産管理を任せたい場合

2-3 第三者の関与がない

2-4 本人が亡くなった後の次の相続の指定

2-5 倒産隔離機能による信託財産の保護

3 認知症に備える「家族信託」家族信託のデメリット

 3-1 入院・施設の入所の手続等を代行できない

 3-2 遺留分侵害額請求をされる可能性

4 「家族信託」の手続き

4-1 信託契約書の作成

5 まとめ

1 老後の不安を解消する「家族信託」とは?

老後対策として「家族信託」という制度がありますが、「家族信託とは何だろう?」という疑問を持つ方は少なくないと思います。

以下では「家族信託」という制度を簡単に説明していきます。

1-1 「信託」とは。 「投資信託」との違いは?

信託とは、財産を信頼する人に託し、自分又は他の人のために財産を管理・運用してもらう制度です。多くの方が「信託」と聞いて、思い浮かべるのは「投資信託」ではないでしょうか。

投資信託は投資信託運用会社等が利用者から預かった金銭で有価証券(株など)や不動産などを運用します。これは、「商事信託」という種類の信託となります。

今回解説する家族信託は、自分の老後等に備えて、所有している不動産や預貯金などを信頼できる家族に託し、管理等を任せる方法で、「民事信託」という種類の信託となります。投資信託などの商事信託とは全く違うものとなりますので注意が必要です。

1-2 意外と知らない「信託制度」の始まりと歴史

信託制度のはじまりは、古代エジプトや古代ローマが起源であるなど所説ありますが、一般的には中世のイギリスにおいて成立した慣習制度がそのはじまりと言われています。

イギリスでは、十字軍によるイスラム王朝への遠征等の戦争に際し、領地の管理を遠征中の領主が信頼できる第三者に任せ、その領地で得られた収益を残された家族に給付してもらい、戦地から戻った際に第三者から領地の返還を受けるという慣習制度がありました。

この慣習制度は、フランシスコ教会の僧侶がイギリスにおもむいた際にも利用されていたという記録があり、ヨーロッパにおいてはこうした制度が普及していた考えられます。

この慣習制度が、現在における信託制度のはじまりと言われています。

ヘルメットをかぶった黒い革のジャケットの男

その後、信託制度は、ヨーロッパからアメリカに渡り、個人の遺言執行や遺産管理に際に信託制度が用いられるようになりました。更に、19世紀に起こった南北戦争を契機に盛んとなったインフラ事業の社債引受けのために、次第に信託会社が広がっていきました。

日本での信託制度は、明治後半にアメリカで発展した制度が導入されてできたものといわれています。1900年(明治33年)に「信託」という言葉が初めて法律に登場し、「地方債券、社債券及株券ニ関スル信託ノ業務」と記された日本興業銀行法が最初となります。

そして、担保付社債信託法が1905年(明治38年)に制定され、営業免許を受けた有力銀行が、担保付社債信託業務を行うようになりました。日本では、事業会社を対象とする信託制度が最初に導入されました。担保付社債信託とは担保権を信託財産として、受益者を社債権者とする信託です。一方で、1906年(明治39年)に設立された東京信託株式会社が個人の財産の管理・運用を専門に取り扱う信託会社だといわれています。

その後、信託会社が数多く設立され、1921年(大正10年)末には488社を数えるまで信託会社が設立されました。しかし、当時は信託に関する概念も、法整備もされていなかったため、資力や信用力が十分でない信託会社も少なくありませんでした。そのため、1922年(大正11年)に「信託法」と「信託業法」が信託の概念を明確化し、信託制度の健全な発展を図るために制定されました。これらの法律により日本の信託制度は確立され、発展期を迎えました。なお、三井住友信託銀行、みずほ信託銀行、三菱UFJ信託銀行の前身である三井信託銀行、住友信託銀行、安田信託銀行、三菱信託銀行が設立されたのもこの時期です。

第二次世界大戦下においては、金融機関や信託会社の統合が進められました。「普通銀行等ノ貯蓄銀行業務又ハ信託業務ノ兼営等ニ関スル法律(現在の兼営法)」が1943年(昭和18年)に制定されました。その後、信託会社の統合が進み、専業の信託会社は戦争が終わるころには7社程になりました。

戦後、政府およびGHQ(連合軍総司令部)の方針により、信託会社が1948年(昭和23年)に「銀行法」により銀行に転換しました。兼営法により、信託業務を兼営する信託銀行となったのです。戦後の経済復興のために長期の資金の安定供給が必要になり、1952年(昭和27年)に「貸付信託法」が1952年(昭和27年)に制定されました。貸付信託の取扱いが信託銀行により始められました。貸付信託は、多数の人々から資金を集め、信託受益証券を発行して、資金の貸付け等により運用する制度です。貸付信託は、戦後、産業界への長期資金の供給源として大きな役割を果たす一方で、広く国民から比較的高利の安定した長期の貯蓄手段として、受け入れられるようになり、現在に至っています。

2 認知症に備える!家族信託をするメリット

「生前対策として家族信託があると聞くが、どんなメリットがあるのか」という疑問を持たれる方もおられると思います。以下では家族信託のメリットについて説明していきます。

2-1 認知症対策

本人が認知症などになり、判断能力が低下すると財産管理ができない場合があります。家族信託では不動産や預貯金などを信頼できる家族に託し、管理等を任せることができるため認知症対策の一つとして有効です。

2-2 柔軟に財産管理を任せたい場合

家族信託は柔軟な財産管理が可能です。

具体的には任意後見制度では、家庭裁判所への報告義務等があり、財産の積極的な活用や相続税対策が難しいです。しかし、家族信託は上記のような制限が少ないため柔軟な財産管理が行える場合があります。

ただし、柔軟に財産管理をするには有効な信託契約書を作成する必要があります。

2-3 第三者の関与がない

家族信託以外の認知症対策として利用される任意後見では任意後見監督人選任の申立てが必要となります。任意後見監督人は家庭裁判所が選任し、任意後見監督人は弁護士や司法書士などの第三者から選任されます。

そのため家族信託は任意後見と比べて第三者に関与されないという点でメリットがあるといえます。

2-4 本人が亡くなった後の次の相続の指定

例えばA、B(Aの配偶者)、C(AとBの子)及びD(AとBの子)がいたとします。Aが所有している不動産をB(配偶者)に相続させた後、C(子)に相続させたいとします。

上記のAの希望は遺言書に定めることはできません。しかし、家族信託の場合、Aを委託者兼受益者、Cを受託者とし、信託契約で「Aが亡くなったあとはBを受益者とし、Bが亡くなったらCに受益権が移る」と定めます。この場合、不動産は最終的にCのものとなります。

2-5 倒産隔離機能による信託財産の保護

受託者が自分の借金等で自己破産する場合、信託財産は守られます。受託者の財産と信託財産は法的に分けられているため託した財産が破産等の影響を受けることがないからです。

なお、信託財産は受益者の「信託受益権」に形を変えています。そのため受益者が強制執行などを受ける等の場合は、財産を差押えられる可能性があるため注意が必要です。

3 認知症に備える「家族信託」家族信託のデメリット

「生前対策として家族信託があると聞くが、どんなデメリットがあるのか」という疑問を持たれる方もおられると思います。以下では家族信託のデメリットについて説明していきます。

3-1 入院・施設の入所の手続等を代行できない

家族信託は財産の管理が主な目的のため、入院・施設の入所の手続き等を代行すること ができません。そのため、身上監護が必要な場合は任意後見を利用する必要がありま  す。

 3-2 遺留分侵害額請求をされる可能性

上述したとおり、本人が亡くなった後の次の相続の指定ができることは家族信託のメリットです。しかし、家族信託契約によって決めた後継者に受益権を承継する際に、遺留分を持つ相続人から、遺留分侵害額請求をされる可能性があります。遺留分侵害額請求により家族の関係が悪化する場合もあるため、家族信託を進める際には家族でよく話し合う必要があります。

男, 弁護士, オフィス, デスク, コンピューター, 政策提言, 公民権

4 「家族信託」をするために必要な手続き

以下の説明では家族信託の手続き方法を解説します。

4-1 信託契約書の作成

家族信託では、信託契約書の作成が必要です。任意後見とは違い必ず公正証書で作成する必要はありませんが、多くの信託銀行等で信託専用の口座を作成の際に公正証書で信託契約書を作成することを求めるため公正証書で作成する必要があります。なお、信託専用の口座を作成には注意が必要です。

公正証書で信託契約書を作成するためには公証人との打ち合わせが必要です。具体的には信託契約書の案を作成し、提出することです。また、信託財産に不動産がある場合は登記の申請が必要です。詳しくは弊所のブログ(https://osaka-kazoku-shintaku.jp/archives/1667)をご覧になっていただけると幸いです。以下は司法書士法人やなぎ総合法務事務所が使用している信託契約書の案です。


令和6年第     号
信託契約公正証書

本職は,当事者の嘱託により,令和 年  月日,下記の法律行為に関する陳述の趣旨を録取し,本公正証書を作成する。本   旨委託者 ○○ ○○(以下「委託者」という。)と受託者  ○○ ○○(以下「受託者」といい,第6条により後継受託者が就任した場合は,当該受託者を指して「受託者」という。以後の後継受託者についても同様とする。)は,将来の委託者の意思能力の減退又は喪失にかかわりなく生活の基盤並びに快適で幸福な生活・福祉の確保等,本信託契約第1条の目的達成を祈念して以下のとおりの条項により,信託契約(以下「本信託契約」という。)を締結する。

以下略

なお、信託契約書の案が採用されると公証役場での本人の意思確認と信託契約書に押印をします。その際、印鑑登録証明書と実印(または運転免許証・マイナンバーカード等の顔写真付き公的身分証明書と認印または実印)、作成費用が必要です。

4まとめ

以上が「家族信託」についてのお話でした。ここまでのお話をまとめたものが以下の表です。

「信
託」とは?
・財産を信頼する人に託し、自分又は他の人のために財産を管理・運用してもらう制度・投資信託運用会社等が利用者から預かった金銭で有価証券(株など)や不動産などを運用することを「投資信託」という・自分の老後等に備えて、所有している不動産や預貯金などを信頼できる家族に託し、管理等を任せる方法を「家族信託」という・一般的には中世のイギリスにおいて成立した慣習制度がそのはじまりと言われている・領地の管理を信頼できる第三者に任せ、戦地から戻った際に領地の返還を受けるという慣習制度があり、この慣習制度が信託の始まりといわれている・信託制度は、ヨーロッパからアメリカに渡り、日本では、明治後半にアメリカで発展した制度が導入されてできた・戦後、産業界への長期資金の供給源として大きな役割を果たす一方で、広く国民から比較的高利の安定した長期の貯蓄手段として、受け入れられるようになり、現在に至っている
家族信託のメリット・本人が認知症などになり、判断能力が低下すると財産管理ができない場合、不動産や預貯金などを信頼できる家族に託し、管理等を任せることができるため認知症対策の一つとして有効
・家庭裁判所への報告義務等もなく、財産の積極的な活用や相続税対策の制限が少ないため柔軟な財産管理が行える場合がある・柔軟に財産管理をするには有効な信託契約書を作成する必要がある・第三者に関与されないという点でメリットがある・ 本人が亡くなった後の次の相続の指定が可能・受託者が自分の借金等で自己破産する場合、信託財産は守られる・信託財産は受益者の「信託受益権」に形を変えるため、受益者が強制執行などを受ける等の場合は、財産を差押えられる可能性があるため注意が必要
家族信託のデメリット・財産の管理が主な目的のため、入院・施設の入所の手続き等を代行することができない・身上監護が必要な場合は任意後見を利用する必要がある・遺留分侵害額請求をされる可能性がある

「家族信託」の手続き
・家族信託では、信託契約書の作成が必要・多くの信託銀行等で信託専用の口座を作成の際に公正証書で信託契約書を作成することを求めるため公正証書で作成する必要がある・公正証書で信託契約書を作成するためには公証人との打ち合わせが必要・信託契約書の案が採用されると公証役場での本人の意思確認と信託契約書に押印し、その際、印鑑登録証明書と実印(または運転免許証・マイナンバーカード等の顔写真付き公的身分証明書と認印または実印)、作成費用が必要・信託財産に不動産がある場合は登記の申請が必要

司法書士法人やなぎ総合法務事務所では、大阪(阿倍野区・阿倍野、天王寺)、東京(渋谷区・恵比寿、広尾)事務所にて「無料相談・出張相談」も受け付けております。どんな些細なご相談も親身になり耳を傾け、どのようなご依頼でもお客様のご希望、目的に近づけるよう励みます。お気軽にご相談、お問い合わせください。

「無料相談」のご予約は下記の「空き状況検索」からできます。是非ご活用ください。

この記事の監修者

代表社員  柳本 良太(やなぎもと りょうた)

柳本 良太

「法律のトラブルで困っている人を助けることができる人間になりたい」という思いから18歳の時に一念発起し、2004年に宅地取引主任者試験に合格。続いて、2009年に貸金業務取扱主任者試験、司法書士試験に合格し、翌2010年に行政書士試験に合格。2010年に独立開業し、「やなぎ司法書士行政書士事務所(現:司法書士法人やなぎ総合法務事務所)」を設立し、代表社員・司法書士として「困っている人を助ける」ことに邁進する一方で、大手資格予備校講師として多くの合格者も輩出。

その後、行政書士法人やなぎKAJIグループ(現:行政書士法人やなぎグループ)を設立、桜ことのは日本語学院の開校などより広くの人のための展開を行いながら活躍中。

モットーは「顧客満足ファースト」と「すべてはお客様の喜びのために」。

<保有資格>

・宅地取引主任者(2004年取得)

・貸金業務取扱主任者(20009年取得)

・司法書士(2009年取得)

・行政書士(2010年取得)

<所属法人>

司法書士法人やなぎ総合法務事務所 代表社員

行政書士法人やなぎグループ 代表社員

やなぎコンサルティングオフィス株式会社 代表取締役

桜ことのは日本語学院 代表理事

・LEC東京リーガルマインド資格学校 元専任講師

専門家に無料で相談できる「無料相談」をご利用ください

当事務所では、相続・生前対策でお悩み・お困りの方、トラブルを解決したい方のために、相続・生前対策の専門家が無料(初回60分に限り)でご相談に対応させていただく「無料相談」を実施させていただいております。

<相談場所>

・弊所大阪事務所(アクセスはこちら

・弊所東京事務所(アクセスはこちら

・オンライン相談

<相談対応>

・平日9:00〜20:00

・土日祝も対応(10:00〜18:00)

・事前の予約で出張対応も可能

私たちは、「顧客満足ファースト」のモットーのもと、お客様にお喜びにいただけるサービスの提供のため、丁寧にヒアリングさせていただきながら、相続・生前対策のご相談に対応させていただいております。

まずはお気軽にお問い合わせ、ご相談ください。

お問い合わせ先

相続・生前対策に関するお問い合わせはこちらからお気軽にどうぞ。

<お電話>

フリーダイヤル 0120-021-462

受付時間 平日 9:00〜20:00 土日祝日 10:00〜18:00

<メール>

support@yanagi-law.com

受付時間 24時間受付中