実家と金銭の信託 ~吹田市 T様の事例~
委託者母様:72歳 受託者娘様:42歳 ※父は他界
信託財産:「母の住んでいる家」「預金」「株式」「投資信託 1億円以上」
【相談内容】
72歳の母が最近購入したマンションで一人暮らし。
ゆくゆくヘルパー利用等も必要になるかと考えているが、現時点では認知症はあまり見られない。
娘様は嫁に出ていて関東住まいで、母のことは心配だが、子供の学校・夫の仕事のこともあって大阪にはまだまだ帰れそうにない。
母の身体的な介護等は、家族ではできないので、将来的には、自宅は売って、高齢者住宅や施設でお世話になろうと考えている。
母は貯金も年金も多いので、金銭的には問題ないが、今ある貯金を母の生活のために利用したいと思っている。
母は、三女夫婦は、まだこれから住宅を購入する予定なので、住宅資金の贈与をしたいと思っていて、他の子どもたちもそれに対して賛成している。
しかし、まだまだ購入物件も見つかっていないし、いつになるかは分からない。
その間に、認知症になって、贈与や不動産の売却ができなくなってしまっては、大変だと悩んでいる。
しかし、母はこれまで自分の好きなようにお金を使って暮らしてきたので、自分の手元に全く財産が残らないのは、不安だとも思っている。
【解決事例】
民事信託で、娘さんに不動産の名義変更をした。
株式・投資信託は、今後利用するつもりもなかったため、全て現金化し、預金として、元々預金口座を持ち合わせていたメガバンクで、”委託者母受託者娘信託口”の普通預金口座を開設し、長女に管理をしてもらった。
銀行の自動送金サービスを利用することで、母自身の自宅前にATMがある預金口座に、毎月定額の金銭を信託口口座より送金することにした。
これにより、母がしっかりしている間は、母のみが自分だけで手元資金には困らないように生活できるように配慮した。
委託者:母 受託者:娘さん 受益者:母
信託の目的:不動産の処分と老後費用の管理・住宅資金等の一括贈与
【効果】
信託を原因として娘さんに所有権移転することで
①贈与税がかからず、贈与より低い登録免許税で名義移転をすることができた
②信託で預けているだけの状態なので、不動産取得税もかからず名義移転できた
③信託契約費用はかかったが、贈与と比較すると安価に済ませる結果となった
④売却時にお母様が認知症でも、娘さんの契約と印鑑で売却できるようになった
⑤売却後は、売却代金を介護費用として娘さんが管理できるようになり、成年後見の心配も減った
⑥三女の購入物件が見つかったときにも、特例を適用し、贈与税をかけないで住宅資金の一括贈与を行うことができた。
⑦万が一母が死亡したら、相続税額が高額になることが予想されていたが、住宅資金の一括贈与等を通じて、相続税の節税ができた
⑧母が認知症発症するまでは、たとえ娘といえども、自分の好きなように誰の管理もされずに自由に利用できる状態にしながら、認知症発症後の金銭凍結を最小限に食い止めた。
【今回のポイント】
贈与して、相続税の節税はしたいと思っているが、今すぐに贈与すると高額な贈与税がかかるので、できないというというご相談。
また、実家に住めなくなったら売却したいが、その時には認知症で売れないという不安。
こういった問題を事前に信託で、財産を娘さんに預けておき、かつ、母の意向を娘さんに託すことで解決することができた。
信託を行う場合には、できる限りは、全財産を信託しておくことが、資産凍結等を防ぐ上では、望ましいです。
しかし、自分の手元の自由なお金も置いておきたいという意向もある方も多いはず。
その一方で、高額な金銭を持ち続けることによるリスクの高い投資商品の営業や詐欺・悪徳商法等の被害にあうかもしれないという不安をもつ高齢者・高齢者家族も多いのが現状です。
今回は、自分の手元金銭と、信託金銭のバランスよく保有できるようにしておいたところも一つのポイントと言えるでしょう。