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相続人(相続を受ける人)が認知症になってしまっていたら!?

配偶者が亡くなった後に認知症となってしまい、いざ亡くなった方の遺産を整理しようとした時、子供たちが困ってしまうということがあると思います。

このように相続人の中に認知症の方がいる場合、どのような方法で遺産を引き継ぐことができるのかを解説していきます。

 

目次

1 認知症の相続人ができないこと

2 成年後見制度を利用して『遺産分割協議』をする注意点

2-1 成年後見制度

2-2 成年後見の注意点

3 認知症の相続人が財産を法定相続する際の注意点

3-1 不動産についての注意点

3-2 預貯金についての注意点

3-3その他の注意点

4 認知症の家族がいるなら知っておきたい生前対策

5 まとめ

 

1 認知症の相続人ができないこと

 

相続人の中に認知症の方がいる場合、どのようなことに注意が必要か説明していきます。

 

まず、認知症の方がいる場合、遺産分割協議をすることができません。

相続人が認知症などで判断能力が低下していると、遺産分割協議に参加して意思表示することはできません。

そのため、遺産分割協議ができず、亡くなった方の口座からお金を下ろせない、亡くなった方名義の不動産について賃貸も売却もできないという問題が起きます。

 

認知症になった相続人がいるからといって、遺産分割協議書などへ他の相続人が署名を代筆した場合、それは無効となります。

私文書偽造の罪に問われるおそれもありますので、絶対にやめましょう。

 

また、認知症の相続人が相続放棄をすることはできません。

上と同様に、認知症で判断能力が低下している方は法律行為をできないからです。

他の相続人が本人に代わって相続放棄の申し立てをしようとしても、家庭裁判所から受理されません。

 

2 成年後見制度を利用して『遺産分割協議』をする注意点

 

相続人に認知症の方がいると遺産分割協議はできなくなると書きましたが、1つ方法があります。

成年後見制度を利用することです。

 

2-1 成年後見制度

 

成年後見制度とは、

認知症、 知的障害、精神障害などの理由で、ひとりで決めることが心配な方が、

財産管理(不動産や預貯金などの管理、遺産分割協議などの相続手続など)や

身上保護(介護・福祉サービスの利用契約や施設入所・入院の契約締結、履行状況の確認など)などの法律行為を、自分の代わりに後見人という役割の人に任せる制度です。

 

成年後見人は、本人のためにどのような保護・支援が必要かなどの事情に応じて、家庭裁判所が選任します。

本人の親族以外にも、法律・福祉の専門家その他の第三者や、福祉関係の公益法人その他の法人が選ばれる場合があります。
成年後見人を複数選ぶことも可能です。
また、成年後見人を監督する成年後見監督人が選ばれることもあります。

 

成年後見制度のさらに詳しい説明はこちらをご参照ください。

【成年後見】親が「認知症」になってしまったら財産管理はどうすればいいの!?

https://osaka-kazoku-shintaku.jp/archives/1677

 

2-2 成年後見の注意点

 

遺産分割協議をするためだけに安易に成年後見人を選任することはおすすめできません。

その理由を含めて、成年後見についての注意点を説明していきます。

 

・後見人は親族以外が選ばれる可能性が高い

 

まず、親族は後見人に選ばれず、専門家が選ばれてしまう可能性が高いです。

 

成年後見人を誰にするかは、家庭裁判所が決定します。

最高裁判所事務総局家庭局が発表している「令和4年1~12月成年後見制度の概況」によると、配偶者や親兄弟などの親族が成年後見人に選ばれている割合は19.1%と2割以下です。弁護士や司法書士などの専門職など親族以外が成年後見人に選ばれるケースが8割を超えています。

 

後見人に専門家が選ばれた場合、認知症の方の財産管理は後見人が行い、またその方の介護に関する決定(どこの施設に入れるか)などについても専門家の後見人と話し合って決めていくことになります。

 

ただ、親族が後見人に絶対になれないわけではありませんので、可能性は低いかもしれませんが、家族が後見人に選ばれるように申し立ての仕方などを一緒に考えてくれる専門家に相談してみるのも良いかと思います。

 

・後見人には報酬が発生する

 

専門家が後見人になると報酬が発生します。

目安は最低月1~2万円、管理する財産額が高額になると月5~6万円になることもあります。

後見制度は原則として途中で止めることができないので、認知症の方が亡くなるまで後見人が就き、報酬も発生します。

 

・他の相続人の意図通りになるとは限らない

 

認知症の方に後見人をつけることで遺産分割協議ができますが、他の相続人たちの意図通りの協議結果になるとは限りません。

後見人は「後見を受けている方の財産を守ること」を第一に考えます。

なので、後見人として法定相続分を死守します。

例えば、「母親は既に十分な財産を持っているから、子どもが多くもらう」や「子どもが母親の面倒を見ていくから、子どもが多くもらう」などの理由で、子どもの取り分を多くし、母親の取り分を法定相続分よりも少なくする内容の遺産分割協議を子ども側が希望しても、後見人が認める可能性はかなり低いでしょう。

 

3 認知症の相続人が財産を法定相続する際の注意点

 

「法定相続分」通りに財産を相続する場合、不動産の相続登記などの相続手続きを行う際に、遺産分割協議書を提出する必要はありません。

よって、認知症の相続人がいても、法定相続分での分け方であれば、遺産分割協議をせずに、登記することが可能です。

しかし、実際には多くの問題があります。

 

3-1 不動産についての注意点

 

「法定相続分で登記する」ということは、不動産が、認知症の方とその他相続人との共有状態となります。

共有状態の不動産は共有者全員が合意しないと動かすことができません。

認知症の方は意思表示ができませんので、売却や賃貸ができないということになります。

 

不動産については「法定相続分」に分ける旨の登記は相続人の1人からすることができます。

また、遺産分割協議をする必要もありません。

しかし、結局、売却や賃貸をしようとすると、認知症の方に後見人をつけることが必要になってきますので、あまり意味のないこととなってしまいます。

 

3-2 預貯金についての注意点

 

法定相続分で相続する場合、一定額を超える預貯金は払戻ができません。

預貯金については、遺産分割協議ができなければ、「自分の法定相続分だけを請求する」ことはできないためです。

なお、「150万円」または「当該銀行にある預貯金額×3分の1×法定相続分」のどちらか少ない額までであれば、払戻しできます。

これは、「預貯金の仮払い制度」と呼ばれ、葬儀費用などの負担を軽減することを目的としています。(民法改正により2019年7月1日から適用が開始された制度です。)

 

3-3 その他の注意点

 

法定相続分で相続する場合、相続税を抑える特例が利用できません。

「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額の軽減」といった相続税を抑える特例も、遺産分割協議ができなければ利用できません。

 

4 認知症の家族がいるなら知っておきたい生前対策

上記のように、相続人の1人が認知症などにより判断能力が無い場合、遺産分割協議をすることができません。

長寿化が進んでいますので、亡くなった方の配偶者が認知症の診断を受けているというケースは増えていると思われます。

相続が発生してからトラブルとならないように、高齢の方が生前にできる対策をご紹介します。

 

・遺言書を作成する

まずは、高齢の方が生前に「遺言」を作っておくことです。

遺言で「誰に何を相続させるか」を決めていれば、遺産分割協議をせずとも不動産や預貯金について、凍結を解除し相続手続きをすることができます。

また、公正証書で遺言を作ることで、相続発生後の検認の手続きが省略でき、相続手続きを円滑に進めることができます。

 

ただし、誰に相続をさせるかを考える際には注意が必要です。

認知症など意思能力に問題のある人に相続させてしまうと、その手続や相続後の財産管理に支障をきたすおそれがあるので注意しましょう。

 

・家族信託をする

親と子どもが家族信託をしておき、信託が終了した後の信託財産の承継先を定めておくことでも、預けた財産については同様に遺産分割協議をせずに相続手続きができます。

家族信託契約を結ぶことで、たとえ預けた本人が認知症になったとしても、信託契約に基づき子どもが親から預かった財産を管理、運用、処分することができますので、認知症対策となります。

 

また、財産を預けた親の死後は、子どもは事前にした契約通り、信託財産の帰属先に帰属させることとなります。

ただし、預けた財産以外については、遺言が無い限り遺産分割協議が必要となる点には注意して下さい。

 

そして、こちらについても遺言と同様に、財産が帰属する人の意思能力に問題がある場合、手続きやその後の財産管理に支障をきたすおそれがあるので注意しましょう。

 

・生前贈与をしておく

不動産や預貯金などの財産を生前に贈与しておけば、相続発生後に遺産分割協議をする必要もありません。

しかし、控除額以上の贈与は贈与税がかかるので注意が必要です。

贈与税は相続税よりも高額となりますので、検討される際は、専門家と相談することをお勧めします。

 

5 まとめ

今回ご紹介しましたように、家族に認知症の方がいる場合、その方が相続人となった時のことを考えて事前に対策されることが大切かと思います。

相続発生後のトラブルを防ぐためにも、早い段階で専門家に相談することをお勧めします。

今回のお話をまとめると下の表になります。

 

認知症の方が相続人となった時の注意点 ・認知症の方は遺産分割協議ができません。

・他の相続人が代わりに協議書に署名することもできません。

・認知症の方は相続放棄ができません。

遺産分割協議をする場合 ・成年後見制度を利用することになる。

・後見人は親族以外が選ばれる可能性が高い。

・後見人には報酬が発生する。

・遺産分割協議の内容は、他の相続人の意図通りになるとは限らない。

法定相続分で相続する場合 ・不動産は、共有者全員が合意しないと売却や賃貸ができません。

・預貯金は、一定額を超える金額は払戻ができません。

・相続税を抑える特例が利用できません。

認知症の家族がいる場合の生前対策 ・遺言書を作成する。

・家族信託をする。

・生前贈与をする。

 

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監修者情報

代表 柳本 良太

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    <資格>

  • 2004年 宅地建物取引主任者試験合格
  • 2009年 貸金業務取扱主任者試験合格
  • 2009年 司法書士試験合格
  • 2010年 行政書士試験合格